自分の人生を経営する―ロバート・キヨサキ著『金持ち父さん 貧乏父さん』(筑摩書房、2000年)

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この本が発売された2000年、ちょうど私は中学生だったが、最寄の書店の店頭に並んでいたこの本のことはよく覚えている。

そのストレートなタイトルが印象に残った。タイトルを見て思ったのは、「自分の父親は、『金持ち父さん』と『貧乏父さん』のどっちなんだろう」ということ。

サラリーマン家庭に育った私は、父親から「カネを稼いでいる」という匂いを感じた記憶はあまりなかった。彼らがどうやって給料を得ているのか、当時を振り返ってもそれを感じ取る端緒はほとんどなかったと思う。

 

(ところで、私の働いている職場でも数年に一回、CSR活動の一環として地元の中学生、高校生に、職場見学会と称してフロアを見学させているが、事務作業を行っている空間を見せて「カネを稼いでいる」ことを印象付けることはできるのだろうか?)

 

結局、中学生であった自分はそれ以上深く考えることはなく、この問いかけは自分が社会人になった後、自分のキャリアについて悩み始めたことで「再発見」することになる。就職活動中にこの疑問を「再発見」することができなかったのは今思えば不幸だった。

 

さて、この本を手に取った理由は、そんな難しいことを思い出したからではなく、単に不労所得生活に興味を持ち、アマゾン先生に尋ねてみたからである。書籍が発売された2000年から15年、当時の中学生はここまで汚れてしまった。いやはや。

 

この300ページの厚さを誇る本の肝は以下の簡単なメッセージである。

・資産を持て

・負債を持つな

まるでバランスシートの話のようだが、この本のいう「資産」とは「私のポケットにお金を入れてくれる」もの、「負債」とは「私のポケットからお金をとっていく」もの、とされている。(p.96)

前者の例として、株式、印税、家賃収入、特許権などが挙げられ、後者の例として住宅ローン、税負担などが挙げられている。この本も、マイホーム幻想を見事に打ち砕いてくれている。

稼いだカネを使ってさらにカネを生み出し、「無駄金」を使うな、マイホームを買うぐらいならアパートを買って賃貸に回せ、そのために必要なリテラシーを身に着けろということである。

考えてみればこれは納得がいく。企業活動であれば極力負債になりそうなものを排除し、優良資産を持とうとするが、自分個人の経済活動を見ればどうだろうか。

 

この本ではこのメッセージに加え、これを実行する妨げとして以下の5つを挙げる。(p.203)

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1.恐怖心:お金を失うことに対する恐怖心

 負けを恐れない心が肝要である。

2.臆病風:悪いほうにばかり考えて臆病になる

 臆病な人間は決して勝者になれない。

3.怠け心:忙しいことを理由に怠ける

 何を怠けるのか? 金持ちになるための努力である。

4.悪い習慣:自分への支払を後回しにする悪い習慣

 自分への支払を先に行うからこそ、他人への支払(納税、クレジットカードの返 済)への緊張感が高まり、収入を増やそうという動機付けになる。

5.傲慢さ:無知を隠すために傲慢になる

 無知はお金を失わせる。

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見れば見るほど、我が身を省みるのが嫌になる。

 

加えて、「スタートを切るための十のステップ」として、以下のステップを示す。(p.232)

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①強い目的意識を持つ―精神の力

②毎日自分で道を選ぶー選択する力

③友人を慎重に選ぶー協力の力

④新しいやり方を次々と仕入れるー速習の力

⑤自分に対する支払をまずすませるー自制の力

 ここではキャッシュフローの管理、人の管理、自分の時間の管理を挙げる。

⑥ブローカーにたっぷり払うー忠告の力

⑦もとはかならず取り戻すーただでなにかを手に入れる力

 元手を回収し、それに加えて元で以上の何かも回収することこそがファイナルインテリジェンスである。

⑧ぜいたく品は資産に買わせるー焦点を絞ることの力

⑨ヒーローを持つー神話の力

 著名投資家ならどう考えるか?を考える。

⑩教えることで得るー与えることの力

 教えれば見返りがある。

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要は自分の時間とカネを使って、カネを殖やすためのマネジメントをすべし、と述べているのである。

①、②、⑤あたりはどうだろうか。自分の胸に手を当ててか投げてもなかなか苦い思いしかない。残業三昧の日々ではねえ。。

結局のところ、日々を自覚的に過ごすか否かがキーであるようである。

ビジネス本もダイエット本もこの結論に行き着くことがままあるが、できる人はすべてを手に入れるらしい。神は二物も三物も与えるのだ。